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暴走王の背負うもの
2007-06-22-Fri  CATEGORY: プロレス・格闘技
 プロレスラー小川直也が、主戦場としていた「ハッスル」から離脱するという。 今後は6月29日に猪木が旗上げ興行を行う(最初で最後の興行になる可能性大であるが)新団体IGFに参戦が予想されている。

 プロレスに興味の無い人にとっては、小川の認識はよくて「ハッスルポーズの人」というところであろうか。しかしながらハッスルポーズ自体は、2004年頃にちょっとした流行であったから、覚えている人も多いと思われる。何しろ当時ハッスルポーズをやった有名人には、プロ野球の清原、ゴルフの片山、さらには

 安部首相(当時は幹事長)まで入っている

 一方、プロレスファンから見た小川直也のキャラクターイメージはまた異なる。ハッスル参戦前の小川は、プロレスの枠、約束事を無視したファイトを一方的に仕掛け、当時のトップレスラーであった橋本真也を引退に追い込んでいる。その後引退を撤回、復帰したものの、最強の一角とされた絶頂期のステータスを取り戻すことは、2005年に亡くなるまで遂に出来なかった。橋本を潰した試合で小川が見せた、常軌を逸した表情や行動は凄惨なものであり、「暴走王」の名が、自然に小川に冠することとなった。

 掟破りへの批判もあったが、小川の危険なキャラクターはそれ以上にファンの間で認知、支持され、プロレス界での存在感を飛躍的に大きくした。本人も、総合格闘技用のグローブを着用して試合をするなど、橋本戦で得たイメージを上手く活用していた。しかしそれは、小川自身が志向するスタイルとは大きく異なるようで(橋本戦の時は、黒幕の猪木が小川に興奮剤を使用したという噂も有る)主戦場をハッスルに移す際に、格闘スタイルを封印した。

 エンターテイメント色の強いリングであるハッスルで小川は、今までのイメージを180度転換したキャラとなる。正規軍トップ「キャプテン・ハッスル」として、興行の最後をハッスルポーズで〆る立場に収まったのだが、「普通のプロレス」をする小川はインパクトに欠け、次第にハッスル内での居場所を失っていく。そういう状況もあり、小川離脱に当たって、その事を惜しむファンの声は少なかった。

 HGの方が面白い試合をするのだから仕方無いのだが

 何故こういう状況に陥ったのか。小川自身のプロレスの力量不足が大きいのは確かであるが、過去の格闘キャラを無かったことにした今のスタイルにも原因があると思われる。「キャプテン・ハッスル」は団体内の役割に過ぎないものだが、「暴走王」のイメージは、橋本真也という一人のレスラーの人生をねじ曲げた行為によって手に入れたものである。その重さ、深さは比べるべくもないものというしかない。仮にそれが、ショープロレス的な世界で足枷になるものだとしても、簡単に無かった事には出来ないし、我々見る側としても、「橋本を潰した男」という経歴込みで小川の現在を評価する訳であり、その部分を反映しないハッスルでのスタイルでは、その分だけ存在感は大きく下がることになる。その隙間を埋められなかった以上、小川のハッスルでの低評価はある意味当然の帰結だと私は考える。

 これは、レスラー小川が背負わねばならない業であろう

 不穏当な方法で他のレスラーから奪った格と評価が、今度は奪った小川自身を縛るものとなっていく。向き合わずに逃れようとしても、どこまでも付いてくるだろう。ある意味、因果応報なのだなと痛感する。
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